(ドラクエ風)楽だと思ってた研修が結構苦痛だった
2日間の研修に行ってきた。月曜日はお休みを取ったので今週は2回しか自分の仕事場には行かなくて済んだ。
ムッフッフ。
研修は木曜日の朝から始まった。その中身とは、イスに座って講師の話を1日中ただ聞くだけ。楽ちんに思えるがず〜と座りながら丸1日過ごすのは想像以上にキツイのだ。
思い返せば過酷な2日間だった。
慣れない俺には苦痛極まりなかった。
その2日目の研修のことだ。
その山は北東の方角にあり、ここからだと8時間は歩かないと着かない。
この2日間の修行の旅には一人で行くため俺以外の3人は家に残すことになる。一時の別れの挨拶を交わし俺は旅だった。
歩いて行けば1日掛かる距離だが、俺には愛用の馬車があるので、それで行けば1時間ちょっとで到着できるだろう。俺はその馬車に颯爽と乗り込んだ。
乗り込んだ馬車を操ってくれる馭者は雇っていないので自分で操縦することになる。
俺は家の敷地を出るといつもとは反対方向に進んで行った。
馬車の中は快適だった。座り心地の良いラグジュアリーシートの上で馬車特有の振動に気持ちよく揺られ、爽やかな森林の香りが混ざった空気が風となって打ちつける。
俺は高速で馬車を走らせた。
遠くに見えていたその山がもう目の前に迫っていた。その山のふもとの所に見えてきた。
試練の塔!
俺の目的地だった。
その塔は元々、教育熱心な一人の教員によって建設された学院だった。全部で8の階層からなる複層帯を形成しており天上に向かってそびえ立っている。かつては多くの学院生がそこで教育を受けていたのだが、いつからか魔物が棲みつき廃墟の塔と化してしまっていた。
俺はそこには何度か訪れたことがあった。
塔の中はその時に探索しているのでここにある宝箱は入手済みだ。俺は馬車から降りると歩いて塔へと向かった。
塔への入口に着いた俺は鍵を取り出す。この入口の扉にはロックが掛けられており先ずそのロックの解除が必要になる。俺は入手済みの「まほうの鍵」をつかった。すると、ピッ!という音と共にロックが解除された。扉が開き塔の中に入ると薄暗い通路が真っ直ぐに伸びている。天井には照明器具が備えられていたがほとんど使われていないようだった。薄暗いその通路を進んで行くと広間になっており周囲の壁には透明なガラス張りの小窓がいくつもあった。ここにある照明具も使われてなく小窓から差し込む陽の光だけがこの広間の明かりになっていた。
小窓から最っも離れている広間の中央付近は特に薄暗くなっていて殆ど光が届いていない。
俺がその方向に向かって歩いているとその暗闇の中で、黒い影が動くのが見えた。
立ち止まって目を凝らしてみるとそこには闇に紛れ込むように数匹のモンスターが徘徊していた!
見たことのない奴らだった。
その中の一匹がこっちに向かって来る!俺は臨戦態勢を整え攻撃に備えた。するとそいつがすぐ近くまで来たところで俺は拍子抜けする。その知らないモンスターは、まだこちらに気づいていなかった。
俺の横を素通りしていったのだ。
俺の口から安堵の息が漏れる。
戦闘を避けることができた俺は他の奴らにも見つからないように気配を殺しながら歩き、上の階層へと昇ることができる昇降機の扉の前へと辿りついた。
するとその扉にも入口と同じロックが掛けられていた。
なかなかハイテクな塔だ!
俺は再び「まほうの鍵」をピッとやって中へ入り一気に5階のフロアーへと上がっていった。
昇降機を降りるとそこには左右に伸びる通路があり、その通路沿には3つの扉が見えた。それらの扉はそれぞれの玄室へと通じているのだが俺が用があるのはその真ん中にある玄室だ。そしてそこに巣食うボスを倒すのだ。俺は気を落ち着け、呼吸を整えるとその玄室へと入っていった。
その玄室の中は静寂に包まれ、生暖かい空気が漂っていた。出入り口となるのはこの一箇所のみとなり周囲はすべて外壁に覆われている。この部屋の中は完全に密室状態となっており空気が止まっていた。その中で、俺は何かが息を殺して潜む気配に気が付いた。隠そうとしているそのわずかな気配だが、それは一つではなかった。その中でも最っも大きな気がその部屋の奥から発っせられていた。まるで炎から湧きでる煙りのように立ち昇っているその場所に、教台が置かれたその向こう側にそいつは座っていた。
魔教師イマイズミが現れた!
魔教師イマイズミは様子をみている。イスに腰掛けたまま動かない。俺も腰掛けたままで動かない。お互いが無言のままに対峙している。お互いが相手の手の内を探り合い、攻め方と勝ち方を模索している。
その玄室には、そいつ以外に俺よりも早くこの玄室に入り俺と同じ目的でここに来たと思われる人間が数名いた。部屋に入ったときに感じた複数の気配の正体は彼らだった。知らない奴らだが、まず味方と思って良さそうだ。彼らも同じように動かない。
すると突然!
玄室内に鐘の音が響きわたった!
塔の何処かにある鐘が俺たちを戦場へと誘う。魔教師イマイズミはその鐘の音と同時に動き出し俺達の前に立ちはだかった!
魔教師イマイズミの攻撃。
「健康とはどういう状態のことを言いますか?」
俺の攻撃。
「病気でない状態」
知らない仲間の攻撃
「 元気なこと」
正解は、心身ともに良い状態であり、社会的にも良好である状態のことを言います。
俺は40のダメージを受けた!
知らない仲間は70のダメージを受けた!
魔教師イマイズミの攻撃
「成人病と呼ばれている心筋梗塞など、その原因は生活習慣病から引き起こされている。では、それにはどんなことがあるか?」
知らない仲間の攻撃
「睡眠不足」
正解は運動不足や、喫煙、飲酒、など不適切な食生活や習慣が引き金となって起こる病気です。
知らない仲間は100のダメージを受けた!
攻撃に反撃。激しい攻防がつづいていく。
魔教師イマイズミの攻撃
「第3章の所を最初から読んでください。」
ゲッ!読むの!?。人前で読むのが苦手な俺には「つうこんのいちげき」となった。俺は170のダメージを受けた。こいつは結構な強敵だ!。この戦闘は長期戦となりそうだ。正午を過ぎ、俺のHPはだいぶ減らされていた。一旦、攻撃を中断し俺はベホイミで自分の体力を回復させた。敵もまだHPには余裕がありそうだった。
後半戦に入り、心なしか敵の攻撃が弱くなった気がした。最初の戦闘が始まりすでに5時間が経過している。不意に、俺に強い眠気がおそってきた!どんどん眠くなっていく。
油断したっ!
敵がラリホーの呪文を唱え、魔界から睡魔を呼び寄せていたのだ!
寝てはダメだ!
俺はその睡魔との戦いになる。
睡魔の中でも人間に好意的な奴もいれば、兇悪的で人に危害を誘発させるヤツもいる。
今、襲ってくるこいつは後者だった!
他の仲間たちは無事なのか?
気になった俺は、フッと隣に座っている奴を見る。
すると、
そいつはすでに寝ていた。
顔は正面を向いているが目は閉じており明らかに寝ている。
もろバレじゃねーかと思った。
俺はなんとかその眠気に耐えた。眠りはしないがボーッとしていて集中力がなくなっていく。そこへ奴は再びラリホーの呪文を唱えてきた。
俺はかなりねむくなった。
眠気をこらえながら眠りにつく昼寝ほど、心地よいものはない・・
何かの物音がして俺は目が覚めた。いつの間にか眠ってしまったようだ。どうやらこいつはラリホーを得意とするモンスターのようだ。その得意呪文を後半戦まで温存していたとすれば知能にも優れていると考えざるをえない。
やはり他の雑魚モンスターとは違う。一旦は目が覚めた俺だがまだラリホーの効果は完全に抜け切れていなかった。すぐにまた眠くなっていく。俺は思った。ここにもし嫁がいてくれれば強力な攻撃魔法で俺たちを後方から支援してくれたことだろう。しかも俺よりレベルは上だ。そう考えていたら俺はある事に気が付いた。
そういえば今日は金曜日だ!
あと1時間ガマンすれば明日はお休みではないか!
俺の中に力が湧いてきて目が覚めていく。
あと少し!
このラリホー野郎を倒し早くお家に帰るのだ!俺は活力を取り戻した。
睡魔を撃退した。
残り30分。奴にも疲労が溜まってきたようだ。動きが鈍くなっている。根気の勝負だった。奴がしゃべればしゃべるほどこっちは眠くなっていく。その誘惑は強烈だった。こっちもずっと座りっぱなしで対応していたためこの姿勢にももう限界がきていた。それでも奴はしゃべり続ける。何というヤツだ!その攻撃への執着。間違いなく今まで戦ったモンスターの中で最強!
残り5分。
俺は耐え、耐え抜いた。そして、ついに終わりの時がきたのだ。ヤツももう限界にきている。立っているのもやっとのようだ。もはや何を言っているのかもよく分からない。
そして・・・
最終ページが今、閉じられた。魔教師イマイズミは力尽きた。
魔教師イマイズミをたおした。
俺のレベルが一気に3レベ上がった。
深いため息が漏れた。やっと終わったのだ。長い戦いに俺はいつも以上に疲れを感じていた。今日も無事にすごせたことに感謝して俺は馬車へと戻り帰路についた。
今日が金曜日でよかった。
俺は心からそう思った。